佐野洋子ふつうがえらい

100万回生きたねこ
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の作者のエッセイです。

佐野洋子の「ふつうがえらい」。

読むたびになんか、幸せな気持ちになる。
きのう、もやもやして、夜中に眠れなかったので、読みました。

84歳のおばあちゃんが、
四十年前になくなった夫の写真を
引っ張り出してきて佐野さんに見せる。
「これ、お見せしたことあるかしら?
世界一の男よ。わたくし、本当に幸せです」
っていうの。もちろん佐野さんはそのおばあちゃんの家に
遊びに行くたびに見ている写真なのだけど、
佐野さんはうれしくてうらやましくてボーっとしてしまう。
でねおばあちゃんは、
「わたくし竜宮城をみましたよ。
踏切で立ち止まっていたら線路の向こうにあってね。
そうすると電車が来てしまって、通り過ぎたらもうなかったの。
あなたにもお見せしたかったわ」
っていうの。
ボケてるんだけど。
佐野さんは、
「人はこうやってこの世からあの世へ渡っていくのだろうか。
それにしても何でこの人はこんなに美しい出来事ばかり訪れるのだろうか?
一人の男を命を張って愛したからなのかなあ」
って思うの。


佐野さんがユーノスのオープンカーを買った話も好きだ。
息子に「いい年してやめてくれよ」って言われるんだけど、
いいの! っていって、佐野さんは、自分の妹といっしょにオープンカーで軽井沢を走るの。
「お姉ちゃん、わたし気持ちいい。わたし40歳だけど気持ちいい」

70歳のおばあちゃんのお友達が遊びに来たから
乗せてあげらら、
「あら、屋根がこんなになるのね。ほ、ほ、ほ、気持ちがいいこと。わたくしこんなの生まれて初めてよ」
とものすごく喜んで佐野さんもうれしいの。
でね、通りかかった制服姿の中学生の男の子たちに
「よぉー、着物のおばあちゃん、オープンカーが似合うぜ!」
って口笛を吹かれて囃されたんだって。

「やっぱりわたしはいい年こいたオバちゃんだわ。
着物のおばあちゃんの上品さにはかなわない」
なんて思ったりするの。

佐野さんのこの本好きだなあ。なんか、辛かったり下世話な日常もすっかり書いているのだけれど、
なんとなく、しあわせなのったりした感覚にくるまれているので、
気持ちがいいのだ。

今日も会社まで歩きながら、
ユーノスのオープンカーに乗った中年のおばちゃんと、着物のおばあちゃんの姿を思い描いていた。

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